昨日「みんなのコロナ学習」というテーマで、台南の歴史的建築物でもある呉園公会堂で講演をさせて頂きました。
まず参加して頂いた方々にお礼申し上げます。お忙しい中ご来訪いただきありがとうございました。
公会堂内や講演の様子については詳しいレポート(本協会初めての講演会が開かれました☺️)をご覧下さい。
講演内容は、台湾の衛生福利部疾病管制署(Taiwan Centers for Disease Control)と厚生労働省『診療の手引き第 5.2 版』2021 年 7 月 30 日発行などを参考に資料を作成し、以下のように構成しました。
最初の「疫学」ではSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)、MERS(Middle East Respiratory Syndrome:中東呼吸器症候群)とSARS-CoV-2 (Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2:新型コロナウイルス感染症)の違いと発生場所について言及しました。伝播様式については飛沫感染が主と考えられており、他にパソコンや携帯などの環境表面を媒介物として感染を広げるFormite感染を紹介しました。潜伏期は曝露から5日程度で発症することが多く、発症から間もない時期の感染性が高い点を強調しました。また年齢階級別死亡数では主に70歳以上に集中しており、高齢者が重症化しやすい点に触れました。
次に「症状」では、まずクイズ形式(各章1問)で”新型コロナウイルスのうち一番多いと考えられる症状”を参加者に問いかけました。このスライドでは「発熱」が答えとなりますが、新型コロナウイルスの特徴として、鼻水が比較的少なく、嗅覚味覚異常が起こりやすい点があげられます。また陽性患者さんの胸部CT画像を一緒にみて、間質性肺炎の所見である浸潤影やすりガラス像などの形状および発生位置(背中側)、そして病院で行われている腹臥位療法をお話ししました。
「治療方法」については、関節リウマチ薬がコロナウイルスに使われていることをあげ、免疫抑制剤としての効果や台湾の治療薬認可のスピードが日本よりも早かった点(ガイドライン)にも触れました。
「ワクチン」については、台湾で使用されているアストラゼネカ、モデルナ、高端(台湾国産ワクチン)とファイザー(8/28予約開始)を中心に、その種類、メカニズム、効果と副作用(ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症の臨床徴候)をお話しました。台湾ではワクチン混合接種が8月7日より開始されており(日本ではまだ)、アストラゼネカ+モデルナ或ファイザーの組み合わせを紹介しました。
最後に「今後の課題」として、ウイルス変異株に対する解析、医療や制度を取り巻く環境の変化に対する適応やワクチンへの慎重な考え方などを述べさせてもらいました。台湾では本土新規感染者数が連続3日間でゼロ(台南では連続63日市中感染がゼロ)でしたが、9月6日まで防疫レベル2と警戒を解いていません。多くの人の忍耐と努力の積み重ねに感謝しつつ、今後は新規感染者数といった数字にとらわれず、質の部分でもできることを模索したいと思います。
早稲田大学&大学院で医療人類学修了、姉妹校の高雄医学大学医学部編入、医師免許取得後、台南の医学センターで研修を終え、消化器内科フェロー、チーフレジデント。台南出身の妻と娘の三人暮らし。早大時ヒマラヤ未踏峰初登頂(6,650m)を果たすが、登山パートナーの死を契機に医学の道へ。日本の鍼灸国家資格も取得済で東西の医療に通じた総合診療、消化器内科医を目指す。
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