突然の一斉休校と自主学習(その六)

前回の「その五」では、幼稚園のオンライン授業についてお話しました。今回は、私自身が勤務先の大学でどう対応しているのかについてお伝えします。

目次

大学でのオンライン授業化対応

私の勤める大学では5月15日土曜日にすべてのコースをオンライン授業にせよと学校から告知がありました。週明けの17日にはすぐ授業です。期間は二週間ですから、最初はお茶を濁す(?)ぐらいで乗り切れるだろうという甘い考えでした。しかし始まってみれば、警戒レベルの引き上げに伴い、どんどん延長されていきます。第一回目の延長の告知は、期末試験週の直前まででした。ここから大学側の苦悩もうかがえます。きっと、期末テストだけはきっちり行わせたかったのでしょう。しかし、数日後、第二回目の告知が出され、あっさりと学期末まで延長することが決まりました。というわけで、2週間の我慢と思っていたのが長期戦となり、しかも期末テストをどう行うかという大問題が出てきました。そうです。オンライン試験を行った場合、カンニングをどう防ぐかという悩ましい問題が出てくるのです。

私は今学期5科目受け持っており、日本語会話が2科目、企業実務、日中対照言語学、中日通訳というクラスが各1つです。予定通り期末テストを行うか、それとも、期末レポート等に変更するか。あれこれ悩みました。

まず日本語会話クラスですが、一年生の会話クラスでは予定通り期末テストを行うことにしました。質問に答えてもらう対面の口頭試験がオンラインになっただけですから、これは簡単です。問題は四年生の会話クラス。四年生の会話クラスでは今学期、日本語ディベートを行っています。四年生の二学期は第15週目に期末試験週となっていて、ディベートの試合をする予定でした。でも告知を受け時にはもう15週なんて目前です。結局、オンラインでもディベートの試合をすることにしました。一昨日無事終わったのですが、オンラインでディベートをする場合は、試合前に試合参加者全員のマイクのテストをすること、タイムテーブルを常に画面に示しておき、時間通りにやるという意識を持たせること、1分、2分ぐらい遅れてもいいように準備時間を長めに確保しておくこと、などを考えて計画を立てました。いつもはタイムキーパーも司会も学生にやってもらうのですが、今回は私自身がやり、スムーズに進行するよう細心の注意を払いました。なお、学生のスピーチ中に、幼い子どもの声や動物の鳴き声が入るなどのハプニングもありました。皆んな笑いをこらえながら聞いていたようです。でもなんとか無事終了。最後まで大きなトラブルもなく終えることができ、ちょっと感動。

次は企業実務と日中対照言語学についてです。こちらもいろいろと考えた結果、期末週には普段どおり授業を行い、当初予定していた期末試験の成績を、オンライン授業期間中の授業課題点で評価することにしました。つまり、「期末テストは無し!」にしました。このお知らせを知って学生が喜んでいる顔が目に浮かぶようでした。では、なぜそうしたのかと申しますと…。理由は、オンラインテストで完璧なカンニング対策をするのはとても難しいからです。仮に試験中にカメラをオンにさせたところで、デスクトップはノート、壁やモニターの周りはポストイットだらけかもしれません(笑)。オンラインテストにするなら、学生がノートやら何やらを見てしまうことを前提で出題する必要があるのですが、そもそもそんな試験を作るのは非常に難しいわけです。それで教員によっては、レポートによる評価に切り替えた人もいます。しかし、私はそれだけはやめておきました。確かにこの2つのクラスは知識を学ぶタイプの授業で、期末レポートに変えても差し支えありません。ですが、2クラスとも履修者が60人。それだけの人数分のレポートを読んで評価することは、教師にとって自分で自分の首を締めるようなものです。それに、何を書いているのかさっぱりわからない文章や、ネット上から勝手にコピペしてきた文章とも格闘しないといけません。というわけで、期末テスト週だけれども普段と同じ授業をすることにしました。

最後に中日通訳クラスですが、四年生の科目なので、こちらも今週、期末試験を行いました。通訳は会話と同様、技能が関わるクラスです。テストを行って、一学期の練習の成果を見てあげないわけにはいきません。それであれこれ考えた末、中国語の音声ファイルを先に配っておき、試験当日はその音声を聞かせ日本語ですぐ答えてもらうという方法を採りました。50人近くいるクラスで一人数分間ずつ、全員やって3時間かかる試験です。指定範囲のうちどの問題を出すかも乱数作成サイトで作成し、一人一人異なる問題を出すなどの工夫をしました。カンニング対策は万全とは言えないかもしれませんが、瞬間的な作業ですし、準備してきたかどうかもわかりますので、これだけやれば十分だったのではないかと思います。またもう一つシャドウイングの課題も出し、こちらも期末テストの評価の一部としました。こちらも無事終了し、ほっとしているところです。しかし今週中に急いで成績をつけなければいけませんから、休んでいる暇はありません(涙)。

いかがでしたでしょうか。オンライン授業というと、授業をどう進めるかという点が注目されがちですが、オンラインでの試験とその評価はとても難しいということがおわかりいただけたかと思います。私はなんとか以上のような方法で切り抜けましたが、小、中、高の先生たちはテストはどうするんでしょうね。ちょっと気になるところです。

「突然の一斉休校と自主学習」シリーズはここまでです。次はまた違うテーマで書いていこうと思います。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

バックナンバーはこちら↓

突然の一斉休校と自主学習(その一)突然のリモート教育
突然の一斉休校と自主学習(その二)オンライン授業の改善
突然の一斉休校と自主学習(その三)台湾の学校が迅速にオンライン化できた3つの理由
突然の一斉休校と自主学習(その四)オンライン授業の思わぬ収穫
突然の一斉休校と自主学習(その五)台湾の幼稚園オンライン授業

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