ピロリ菌

胃・十二指腸潰瘍の原因として一般的に知られている「ピロリ菌」ですが、正式名称はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)といいます。中国語名は「幽門螺旋桿菌」で、幽門部(pylori)に生息する螺旋(Helico)型の細菌を指します。

ピロリ菌の特徴として、上のイラストにあるような鞭毛をらせん回転させて移動することができます。ピロリ菌が強酸性下の胃で活動できるのは、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解、アンモニアで酸を中和し、ピロリ菌周囲の酸を和らげて生きているからだと考えられています。ピロリ菌感染により萎縮性胃炎が生じ、胃癌発生リスクが高まるとされ、WHOはピロリ菌を胃癌発症の危険因子に指定しました。

ピロリ菌の有病率は公衆衛生の発展とも関係し、年齢と地域によって差があります。感染している両親から幼児に口移しで食べ物を与え、ピロリ菌が体内に入り込み、免疫によって排除されないと持続感染に移行する、と考えられています。また、上下水道の不備、井戸水の使用、食器の共用なども関与していると推測されていて、例えば、台湾の最新研究では1990-2000年の有病率は63%だったのが、2016-2020年では29%まで減少し、現在は台湾東部と高齢者に有病率が高めであると発表されました。


ピロリ菌治療方法

日本ではプロトンポンプ阻害薬+アモキシリン+クラリスロマイシンの3剤併用レジメンが一次除菌として標準的ですが、台湾ではクラリスロマイシンベースの治療が行われていて、プロトンポンプ阻害薬+クラリスロマイシン+テトラサイクリン/メトロニダゾールか、それに加えたビスマスを加えた4剤併用が主流です。これは台湾国立大学のランダム化対照試験の結果、ビスマスを加えた4剤を併用するレジメンが第一選択として好ましいという研究に依拠しています。抗菌薬耐性菌の増加により、3剤併用除菌率が多くの国で低下しているため、標準治療では4剤治療が最初に選択されている一方で、薬の量が多くなることが課題としてあげられています。

酸分泌抑制薬については、日本の大手製薬会社である武田薬品工業がボノプラザンを開発し、ピロリ菌除菌時の胃内pH調整、胃・十二指腸潰瘍の治療や予防などに用いられています。このカリウムイオン競合型アシッドブロッカーは、従来のプロトンポンプ阻害薬と違い、胃酸による活性化が不要で、食べ物の影響を受けにくいのが特徴です。台湾ではまだ保険適用されておらず、ピロリ菌除菌においても自費診療となっています(2021年12月)。武田薬品工業は日本での研究を志す留学生を支援していて、先月末の報道によると、この「武田奨学金」は今年で58年を迎え、今までで1,743人の医師と医療研究者が奨学金を受け取っています。そのうち台湾からの留学生は563人(約3分の1)を占めています。支給期間は六ヶ月が2名、三ヶ月が3名で、奨学金は毎月25万円、他に往復航空券や家賃補助などもあります。台湾から日本への留学を考えている学生にとっても非常にいい機会だと思われます。

このように、ピロリ菌の研究や臨床について、今後も日台で活発な学術交流や臨床研究が続くことが望まれます。

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