台湾の大学医学部では、授業のスライド、教科書や学部内の試験で使用する言語のほとんどが英語、国家試験は中国語、実習や臨床は中国語と台湾語という3つの言語が入り混じった複雑な言語環境におかれます(南部は台湾語要素が比較的強いです)。
医学部卒業要件に英語検定スコアが要求されるため、私は在学中にTOEIC800点以上をとりました。
【英語→日本語名のほうが難しい】
台湾の処方薬はほぼ全て英語でタイピングするので、日本で使われている薬品名(カタカナ表記)を見るとたまに違和感を感じることがあります。
たとえば、第三代セファ系抗生物質のひとつセフトリアキソン(Ceftriaxone)は、英語読みするとセフトリア”ク”ソンに発音が近く、私は英語名で覚えているため、逆にセフトリア”キ”ソンの正しいカタカナ表記に戸惑ったりします。
また、関節リウマチ治療のDMARDでリツキシマブ(Rituximab)というモノクローナル抗体がありますが、この英語名のちょうど真ん中に「X」が入っているため(Xはクロスしているイメージ)、この薬はキメラ(マウス蛋白質との混合)だと容易に連想できるものが、カタカナに変換されているとその反応が鈍くなります。
【似たような薬名】
臨床で「樂多がよく効いた」といってくれた患者さんがいて、「樂多=Lactulose」と下剤を指しているんですが、日常会話では製薬会社「LOTTE」も全く同じ表記ですし、健康食品の「ヤクルト」は中国語で「養樂多」なので紛らわしいです。
台湾に住んでいる期間が長くなり、普段話し言葉で使わない英語で会話する際(しかも国際会議で日本人と…)、YESと言いたいところが「對!I agree」になりかける外国語脳内カオスも。一週間に一回定期的にこのコラムで日本語文章を考えることで、母国語の維持を図ってはいますが、日本語書籍を読む時間がほとんど無く、なかなか思うようにいきません。言語回路の整理は永遠のテーマになりそうです。
早稲田大学&大学院で医療人類学修了、姉妹校の高雄医学大学医学部編入、医師免許取得後、台南の医学センターで研修を終え、消化器内科フェロー、チーフレジデント。台南出身の妻と娘の三人暮らし。早大時ヒマラヤ未踏峰初登頂(6,650m)を果たすが、登山パートナーの死を契機に医学の道へ。日本の鍼灸国家資格も取得済で東西の医療に通じた総合診療、消化器内科医を目指す。
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