多元的医療システム

台湾の医療システムはTw-DRG(diagnosis-related groups)という診断群分類ごとの包括支払い方式以外に、Arthur Kleinman(ア-サ-・クラインマン)が提唱した「多元的医療システム」という社会文化的側面があります。精神科医だったクラインマンは台湾、中国などでのフィールドワークを経て、どの国や地域にも異なる複数の医療が存在していることを指摘し、その構造を多元的医療システム(pluralistic medical systems)と呼びました。

上の図に示した3つのセクションを現在の台湾で当てはめてみると、患者さんの多くはまず「Popular(民間) sector」で自分は病気なのか家族や友人などと相談し、常備薬の服用をするか否か、医療機関にかかるのか等を判断し、「Professional(専門職) Sector」において西洋医学や東洋医学(中醫)の医師にみてもらうか、「Folk(民俗) sector」で補完代替医療や宗教的な治療師にかかると考えられます。私が卒業した高雄医大は西洋医学を学ぶ学校ですが、中醫サークルで実習する機会があり、夏休みに台南郊外の小学校で日本鍼灸の講習をしたり、ボランティアで地元の高齢者にマッサージしながら日本時代のお話をお伺いするなど相互交流をさせて頂きました。

台湾では日本よりも東洋医学の思想が「Popular sector」に残っている印象で、暑くなったら“緑豆湯”を飲んで“氣を下げる”といった会話が中学生くらいの若い世代からも聞くことができます。「Folk sector」について私はあまり詳しくないですが、台南大地震で瓦礫撤去のお手伝いした時に、被災されたマンション近くで「収驚」している治療師さんを見かけました。患者さんの視点で、病気になったらどのような健康希求行動をするのかと考えると、多様多彩な文化が織りなす台湾の医療システムが垣間見えます。

参考: Arthur Kleinman, Patients and Healers in the Context of Culture. Berkeley: University of California Press, 1980

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