台湾政府が外国人に対して発行する永住カードである「外僑永久居留證」(略称APRC)。本稿は、これを取得するための各種条件や必要書類、手順などについての、体験に基づいた覚え書きです。
筆者大洞は2012年3月から台湾で暮らしており、今年2021年4月に永久居留証を申請し、取得しました。
申請するための主な条件は、台湾に連続して5年間居留(居留証を持っている状態)しており、かつ1年間の滞在日数が183日を超えていることです(詳しくは下記資料「外國人申請永久居留送件須知」をご参照ください)。
筆者は初めワーホリビザ、翌年から労働ビザ(工作簽證)、その後結婚ビザ(依親簽證)になりましたので、10年目にしてようやく申請資格が得られた次第です。なので感慨もひとしおでした。
申請にあたり、まずは移民署へ行きました。台南の移民署といえばヨーロッパのお城のような建築で、春には大きな真紅の木棉花(勲章に似ていることから日本統治期は将軍花と呼ばれていたとか)が咲き乱れる台湾一美しい行政施設として名を馳せていました。が、今年(2021年)7月からは府前路と永福路の交差点に面したお役所っぽい建物に移転していますのでご注意ください。
受付の方は、とてもフレンドリーかつ丁寧に手順を教えてくれました。申請時のビザの種別(結婚、労働、伝道、投資、会社経営など)によって必要書類が少々異なります。
◆結婚ビザから申請する場合の必要書類・金額等
申請書/カラー写真(4.5cm×3.5cm)1枚/新旧パスポートの現物とコピー/居留証の現物とコピー/警察刑事記録証明(通称「良民證」)/預金通帳など財力を証明するもの/健康検査合格証明/親族関係証明(配偶者の身分証)/申請費用1万元
なお労働ビザ所持者の場合は配偶者の身分証がいらない代わりに、「工作核准函(労働を認める書類)」および「1か月以内に発行された在職証明」が必要になるそうです。
それぞれについて見ていきましょう。
パスポートについては、もし居留期間中に切り替わっている場合、本来であれば古い方も提出しないといけないそうですが、筆者は紛失してしまっていました。一瞬不安になりましたが、受付の人に「それなら、無くしたって一筆書いておけばOKですよ」と教えていただき、一安心。
「警察刑事記録証明」は、最寄りの警察署に行って申請書を出すだけでよく、3日後には受け取ることができました。発行代100元。筆者は中西區南寧路144號の第二警察署へ行きました。
「健康検査合格証明」については、書類には記載されていますが、筆者の時はなぜか提出を求められませんでした。
そして、一番ハードルが高いのが「財力証明」。本人名義の預金通帳に、58万元以上の預金がある状態でコピーをとって、提出する必要があります。なぜ58万元かというと「最低賃金の年収分の2倍」と定められているからだそう。2021年7月現在、月給の最低額は24,000元ですので、12をかけて更に2をかけると、57万6千元になるわけです。ですので今後も上がっていくはずです。
申請時に申請費として1万元を支払い、領収書をもらいます。
◆申請後
各都市の移民署で受理された申請書は、まずそこで一週間ほどかけて内容を審査して、問題ないと確認されてから、台北の中央当局に送られます。中央に送る際に一度台南の移民署のスタッフから通知をいただき、そのさい「恭喜!(おめでとう)」と言われましたので、この時点でほぼ安心してよさそうです。
申請から1か月半ほどで永久居留証が申請を行った移民署に届きます。通知をもらったら、申請費の領収書をもって窓口に行けば受領できます。
◆永久居留証取得後に仕事をするには
労働部に「外國人工作許可證」を申請します。まず「外國人工作許可申請書(個人)」をダウンロードして印刷・記入し、書留で「100臺北市中正區中華路一段39號10樓 勞動部勞動力發展署」(TEL02-8995-6000)に送ると、一週間から二週間ほどで許可証(カード)を送ってきてくれます。これを持っていれば、どんな仕事でもしてよいとのこと。詳しくは外國人在臺工作服務網のサイトをご参照ください。
◆注意事項
・手持ちの居留証が有効期日まで残り2ヶ月を切っていると申請できません。これは申請から受領までに約1か月半を要するためとのことです。
・取得後、定められた更新期限はありませんが、パスポートが切り替わった際には更新する必要があります。
・【重要】取得の翌年以降、もし1年間の滞在日数が183日に満たない場合、取り消されてしまいます。ですがやむを得ない事由によりしばらく台湾を離れる場合は、先に移民署にその旨を伝え、承認されれば、2年まではこの規定が適用されずに済むそうです。
より詳しい情報は、內政部移民署公式サイト内の「外國人申請永久居留送件須知修正規定」という手引きをご参照ください。今回この記事を書くためにあらためて台南の移民署の窓口を訪ねた際、窓口の方も大変親切にご教示くださいました。感謝申し上げます。
(だいどうあつし) 作家、翻訳家、三線弾き。1984年東京生まれ。「人がより自然に、シンプルに、活き活きと暮らせる町」を求めて、2012年より台南在住。日本蕎麦屋「洞蕎麥」を5年間経営後、翻訳事務所「鶴恩翻譯社」を運営。日本語著書『台湾環島 南風のスケッチ』、中国語著書『遊步台南』、共著『旅する台湾 屏東』、翻訳小説『フォルモサに吹く風』『君の心に刻んだ名前』『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』。
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