【月一コラム みんなの台南生活】(15)からすみの話

台南市日本人協会の会員より、毎月1回、台南生活コラムをお送りいたします。

目次

からすみの話
文/中原由貴

縁あってからすみ屋の夫と結婚して4年。

「からすみって高級品だし、そんなに売れるの?」と思っていた私ですが、結婚して初めての春節を控えた頃、その認識は誤りだと気付かされました。予約が次々に入り、問い合わせの電話は鳴り止まず、店舗ではひっきりなしにお客さんがやってきて、飛ぶように売れる。集荷待ちのからすみが山のように積まれ、毎日顔を合わせるクロネコヤマトのドライバーも一人では手が足りず、応援でバイク便のドライバーが駆けつけることも。冗談抜きで毎年春節前はこんな感じなのです。ただ一言、「すごい…」。夫はこの時期だけで体重が3キロ減るとか。春節を過ぎれば落ち着くものの、その後は観光客の方がチラホラ。

近年はコロナ禍で観光客の客足が遠のいていましたが、コロナが落ち着いたことで、また少しずつ戻ってきています。台湾在住の方も、日本へのお土産として買ってくださる方もいます。この機会に、我が家のからすみについてご紹介したいと思います。

1.からすみとは

台湾で作られるからすみは、魚のボラの卵巣を塩漬けし、さらに塩抜きして乾燥させたもので、「烏金」とも呼ばれる伝統的な珍味です。タンパク質や各種アミノ酸が豊富に含まれ、その脂質にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)等の高度飽和脂肪酸等が多く含まれています。

日本でも台湾でもボラは縁起のいい魚とされ、台湾では春節や結婚式などのお祝い事にからすみが振る舞われます。

2.お店の紹介

私たち家族が経営する【吉利號からすみ】は天然からすみの専門店で、安平の中心部から少し外れたところにあります。創業は1935年、今年2023年で88年目。長崎県出身のからすみ職人から製造方法を教わったのが始まりで、その後基本的に変わらない製法で作り続けています。二代目主人は日本統治時代に行われた、からすみ製造コンテストで優勝した経験もあるそうです(そんなコンテストあったんだ…)。

3.からすみが出来るまで

からすみ作りの時期はだいたい12月から。ボラが海流に乗って台湾海峡を回遊してくる頃になると、なじみの卸問屋から連絡が入ります。すぐに買い付けに行き、からすみ作りがスタート。

からすみの製造工程はとてもシンプル。まずは卵巣の血抜きをして塩漬け、洗って塩抜きをしたら整形して乾燥させます。これらの工程をすべて手作業で行います。

私も毎年血抜きを手伝います。冬のこの時期に1年分約1トン(!)のからすみを作るため、来る日も来る日も血抜き。手伝い始めたばかりの頃は、血が残っていると臭みの原因になると言われていたので、それはそれは丁寧に抜いていましたが、丁寧にやりすぎて「もっと早く!」と指導されたことも。経験の差ですが、夫たちの手際の良さを見るとさすがだなと思います。

血抜き以降の作業は三代目である義理の父、四代目の夫と義理の弟の三人で行います。義理の父はからすみ一筋50数年!熟練の技と経験のある職人です。

塩漬けと塩抜きをした後は、気温や湿度の変化に合わせて時間を調整しながら慎重に加圧し整形、そして天日干しと陰干しを繰り返します。乾燥させるにも数十分~数時間ごとに裏返す必要があり、それを毎日繰り返すのでなかなか手間がかかります。お店に出せるレベルまで乾燥させたら、すぐに真空パックと冷凍をして美味しさを閉じ込めます。

お店にからすみが出始めるのは1月中旬頃。春節に贈答用として購入されることが多いので、まずは大きめサイズから売り始めます。もし自分用に小さめサイズをお求めであれば、春節直前か、過ぎてからがおすすめです。また近年は一口サイズのからすみを売り出しており、こちらも好評です。

4.こだわり

ズバリ、「海で獲れた天然のボラ」の卵巣のみを使っていることです。近年養殖ボラの卵巣を使ったからすみが増えていますが、食べている飼料のせいか、どうしても臭みが残ってしまっています。【吉利號からすみ】は代々の味を守るため、天然物にこだわっています。

次に鮮度です。鮮度が落ちた魚卵で作るからすみはやはり味が落ちます。見た目や触感で鮮度が落ちていると判断すれば、卸問屋に返却することもあります。全ては美味しいからすみを作るためです。

5.からすみの見方

【吉利號からすみ】で扱っているからすみは、色の濃淡があります。これはボラが食べているものの違いなので、天然ボラの証です。味の違いは淡い色があっさり、濃い色は濃厚です。お好みでご購入ください。

また、からすみ下部の方に大小さまざまな黒いシミが見られることがあります。これはボラを捕まえる際についたもので、人間で言う打ち身です。食べる際に削ぎ落せば問題ありません(強い苦みがあるので、そのまま食べるのはおすすめしません)。

6.からすみの食べ方

そのまま生でスライスして食べても美味しいですが、炙ってから食べるのもおすすめです。炙る時は少し水につけて皮を剥ぎ、お酒を薄く塗って乾燥させた後、直火やトースター、ガスバーナー等で表面の色が変わる程度に炙れば十分です。

その他、公式サイトに料理レシピを載せていますので、ぜひご参照ください。

7.注意点

家族で経営している小さなからすみ屋ですので、からすみ作りの最盛期(12月~2月頃)はどうしても人手不足となってしまい、午前中お店を閉めていることがあります。その場合は先にお店に電話していただくか、午後~夕方頃にお越しいただければと思います。

また、11月~12月頃は全てのからすみが売り切れていることもあります。事前に電話やメールで在庫を確認していただくと安心です。

8.最後に

私たち一家一同精魂込めて作っていますので、味や品質には絶対の自信を持っています。お世話になった方へ、また久しぶりに会う友人・親戚の方等へのお土産にぜひご利用ください。台南市日本人協会会員の方であれば、全品5%オフでご購入いただけます(会員証をご提示ください)。

【吉利號からすみ】
住所:台南市安平区安平路500巷12号
電話番号:(06)2289709
営業時間:10時~18時 ※12月頃~春節までは午後~20時
公式サイト:https://www.karasumi.tw
メール:karasumi@karasumi.tw

文/中原由貴(なかはら ゆき)
茨城県出身。仕事を退職後、語学留学のため来台、留学中に旅行で訪れた台南ののんびりした雰囲気に誘われて、日本に帰国後ワーキングホリデービザを取得して再来台。台南のゲストハウスで普通に働いていただけなのに、からすみ屋の夫と知り合い結婚。現在は3歳の子育てに奮闘中。

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