台南市日本人協会の会員より、毎月1回、台南生活コラムをお送りいたします。
多言語都市台南で働く
文/何川雄
1.多言語都市台南の日常
私が台南で働き始めてやっと8ヶ月が経ちました。以前は台北におり、中国語はそれなりに理解できます。しかし、店員さんが早口だと部分的に聞き取れないことはあります。そんな時まごまごしていると、台南では決まって、店員さんが台湾語に切り替えて話してくるのでとても困ります。私は台湾語が全くわかりません。(余計にわからなくなったじゃないか、チクショー!) まあ、相手は親切でしてくれているのですが。
なぜ台湾では中国語と台湾語が併用されているのか、説明するととても長くなるので省略しますが、次に私の職場の日常を例にあげたいと思います。
私の職場は水道管を作る工場です。私以外に日本人はいないので、どんな雰囲気なのか、働き始めた時はとても興味を持って観察していました。若い社員同士は普段、中国語で会話していますが、年輩の人と話す時はすぐに台湾語に切り替えて話します。(器用な人達だな)
一方、普段は台湾語でしか話さない年輩の人も、私のような外国人と話す時は中国語で話してくれます。会社には外労(外国人労働者)もおり、彼らは仕事中も母国語であるタイ語、ベトナム語で互いにやり取りしています。外労と私が話す時は中国語を使います。
2.コミュニケーションに対する考え方の違い
このような多言語の職場環境なので、日本的な職場の秩序は全く感じられません。台湾と日本の違いを挙げると、例えば会話が苦手な人を疎外しないのが台湾、社会人としての周りとのコミュニケーション能力を各自に求めるのが日本です。台湾ではムリに会話に加わることを意識する必要がありません。また、周りの人が何を話しているか、もしわからなくても誰も焦ったりしません。なぜなら台南ではお互いの常用する言語が違うことは普通によくあることだからです。
台南での私の職場の日常の雰囲気は日本とは全く違いますが、不思議と心地良く感じます。それは多分、日本の職場の不文律のようなものから解放されているし、お互いに違っているのは当たり前、そこからお互いに努力して意思疎通し、仕事を前に進めようとしているからだと思います。
3.日本人と台湾人の「共通言語」
職場で会議が行われる時、一応中国語で発言することになっています。しかし、技術面で細かい話になって白熱してくると、年輩の台南人はついつい台湾語で話します。何を話しているのか、私も少しわかります。それは、台湾語に「生コン」「バルブ」など日本語が含まれているからです。これらは日本統治時代、日本人と台湾人の技術者が同じ現場で働いていた中で台湾語にもたらされ、現代に残っている言葉です。台湾語の「あそび(寸法上の余裕代)」や「仕上げ(工程上の)」といった単語を使うことで日本人と台湾人はすぐに共通の認識を持つことができます。
4.台南で働くということ
台南に来る前、台南のごちゃ混ぜの言語環境で仕事をすることに私はやや不安を感じていました。しかし、働いてみると、多様性を許容しつつ仕事を前に進めるとても心地よい環境でした。そして、日本語と共通する単語とその概念が多数受け継がれており、意思疎通の助けになってくれます。外国で働くというのは大変なことですが、台南のこのような環境は私にとって、そのハードルを低く感じさせてくれます。
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