【月一コラム みんなの台南生活】(16)私の台南ティー・ライフ

台南市日本人協会の会員より、毎月1回、台南生活コラムをお送りいたします。

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私の台南ティー・ライフ
文/林佩樺

私は台南で日本語教師をしています。六、七年ほど前、あるお茶の先生から通訳の仕事を頼まれたのが縁で、その先生にお茶の授業に誘われ、それ以来、お茶をたしなむようになりました。今では、時々頼まれて自ら茶席を設けるようになりました。

「お茶を一杯どうだい。」

台南の町でこんな言葉をかけられたことはありませんか? 台南ではごく普通の挨拶ですが、最近は少し不思議に感じています。小さな茶卓を囲んで、ただお茶を飲んでいるだけなのに、色々な話題が自然と飛び交うようになります。茶席で初めて会った人と、例えば次のような会話をすることもあります。

「この人は日本語を教えている先生なんですよ。」
「え? 本当? どこで教えているの? ちょうど知り合いの息子の友達が日本語を勉強したいって言っていたので、紹介しますよ」
(台南ではよくある「お節介パターン」)

「このお菓子、美味しいですね。どこで買ったんですか?」
「知り合いの娘さんの手作りなんですよ。最近お店を始めたばかりなので、一緒に買いに行きませんか?」
(早速その知り合いを呼んで、茶菓子を持ってきてもらったりする場合もよくあります。)

「後ほど、茶器を作っている先生のところに行くんですよ。」
「え~、いいなあ。私も行ってみたい。」
「興味あるの? じゃあ一緒に行かない?」
(初めて知り合ったお茶友を連れて、事前の予約もなしに見学に行く場合もあります。)

私にとって、台湾で習慣となっている茶席はとても不思議な交流空間です。初めて出会った人でも気軽におしゃべりしながら、友達になったり、商売が突然成立したりすることすらあります。

お湯、茶葉、そして茶器さえあれば、いつでもどこでもお茶ができるので、自由自在にそれぞれ自分のペースでお茶を飲んだり、お茶について話したりすればいい。ただそれだけの「茶空間」は魅力的だと思っています。三、四年前から、私も周りの方々、親戚、イベント、お寺の法会の参加者などをおもてなしするため茶席を設けるようになりました。今の台南では、よく「文青」と呼ばれる方々でも喫茶店やお茶屋さんをしています。皆お互いにライバルのはずなのに助け合っている姿は、やはり台南だけなのかな?とも思っています。

茶米(台湾語:デェミー)は、日本語で言うと「日常茶飯事」の意味です。つまり、お茶を飲むことはお米を食べることと同じく重要で、日常生活の中では欠かせないこと。台南の「お茶会」の形は、私の経験では、大雑把に言って次の四種類に分けられます。

1.個人(昔から現代)
個人的な人脈で誘い合って行うお茶会。町中のおじさんなどは、初対面の人にもよく「お茶を飲みませんか」と気軽に声をかけたりします。

2.テーマ(伝統的)
お茶をやっている業者や関係者の集まった協会などが行うお茶会です。「夕照茶会」、「春日茶会」、「梅花茶会」などが台南の定番です。

3.集会(伝統的)
イベントが行われた際に、来客をおもてなしするためのお茶会。例えば、画家の展覧会の開幕式や、お寺の法会、家の引っ越し祝い(新居落成のお祝いパーティー)などです。

4.オリジナル(いわゆる「文創風」)
最近はやり始めているタイプですが、季節や節句に合わせて行われるお茶会です。例えば、「春分茶席」、「夏至茶席」、「梅の収穫のお祝いお茶会」、「詩歌茶席」、「頌缽茶席」、「デザートを楽しむ茶席」などです。

お茶会のスタイルに応じて、それぞれ独自な雰囲気があります。私自身も友人をお茶でもてなす一方で、違うタイプのお茶会に参加して、違うお茶話を聞いたりしています。そして、その場で自然にできたご縁を楽しんでいます。

台南在住の皆様も是非、ご都合の付く時、気軽に茶席に参加してみてください。

文/林佩樺(りん はいか/リン ペイホワ)
生粋の台南人。大学生の頃から日本語を勉強し、卒業後は貿易会社で日本関係業務を担当。転職して南科(台南サイエンスパーク)の企業に勤務。それから二年後に退職して統大国際教育中心(外国語補修班)に入る。現在は日本語教師・華語教師をしながら、茶芸も教えている。


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