【月一コラム みんなの台南生活】(11)台湾語脳

台南市日本人協会の会員より、毎月1回、台南生活コラムをお送りいたします。

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【月一コラム みんなの台南生活】(11)台湾語脳
文/山本彩乃

台湾に住んで10年以上経ったある日、市場で台湾人の店主とこんなやりとりがありました。

店主:「◎△$♪×¥●&%#?!」(台湾語)
 私:「不好意思,我聽不懂台語。請您說國語好嗎?」
   (すみません、台湾語がわからないので、中国語で話してもらえますか?)

すると、店主は少し強い口調でこう言いました。

「你為什麼不會台語呢? 台灣人要講台語啊!」
(なんで台湾語できないの? 台湾人なら台湾語で話さないと!)

私はいきなり怒られた様な気がしたので、おずおずと答えました。

「因為我不是台灣人,所以……不會」
(私、台湾人じゃないから……できないんです)

店主は驚いたような納得できないような表情で私を見つめました。どうやら、店主は私のことを台湾人と思い込んでいたようでした(10年も住むと日本人の雰囲気は完全に消失?)。その後は中国語で話してくれましたが、店主は続けてこう言いました。

「你住台灣多久啊? 我們隔壁店的越南人,嫁來台灣3年了。她已經會說台語欸。」
(あなた台湾に何年住んでるの? 隣のお店のベトナム人は嫁いで来て3年だけど、もう台湾語が話せるわよ)

このやりとりは私の台湾語学習に火をつけました。それまでは中国語が話せれば十分だと思っていましたが、在台10年を過ぎて、台湾の人との交流が多くなってくると台湾語ができないことに不便さを感じ始めていました。そして、やっと重い腰を上げ台湾語の学習を始めたのでした。

専門的に台湾語を教えている先生は南部でもそれほど多くはなく、私は高雄のTLI(中華語言中心)という語学学校へ習いに行きました。週に2回、1回2時間、マンツーマンで2年間ほど学習を続けました。

台湾語学習で一番苦労したのは「発音」でした。みなさんもご存知の通り台湾語の声調は中国語の倍の八声です。中国語の声調でさえままならないのに…。変調もある台湾語の声調をマスターするのは中国語の10倍は苦労しました。毎日、録音した授業の内容を繰り返して聞き、歌を覚えるようにフレーズを頭に叩き込みました。

2年間の学習を終えるころ、台湾語の先生は「多一個語言,多一個頭腦。恭喜你,得到新的頭腦了!!(言語が増えれば、脳も新しく増える。おめでとう、新しい脳を手に入れましたね)」と言葉をかけてくださいました。

そんな新しい台湾語脳を手に入れた私が台湾語を学んでよかったと思うことは次の3つです。
1)友人や家族の台湾語会話が聞き取れるようになった
→ 通訳してもらうことなく、時差なしで笑えます。アウェイ感も解消されました。
2)ビジネスの場面で台湾人同士の秘密の会話内容が聞き取れるようになった。
→ 通訳をする際に役立ちます。時には無理なお願いも台湾語で話せばOK!
3)市場やタクシーでの会話もバッチリ
→ 台湾のおじさん、おばさんと仲良くなれます。

台湾での生活をより快適にしてくれた台湾語脳、これからも長く使っていきたいです。
最後に、あの日私を叱ってくれた市場の店主に感謝したいと思います。

文/山本彩乃(やまもと あやの)
1974年、神戸生まれ。1999年、日本語教師として台南YMCAへ赴任。その後、4年間台南で暮らす。2004年から高雄在住。メーカー、貿易会社、日系企業勤務などを経験。現在はその経験を生かし、日本語を使って働く台湾人日本語学習者の指導や通訳業務などを行っている。

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