【月一コラム みんなの台南生活】(8)日本のおっさん、20年間暮らした中国大陸から台南へ

台南市日本人協会の会員より、毎月1回、台南生活コラムをお送りいたします。

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日本のおっさん、20年間暮らした中国大陸から台南へ
文/横田武

両親が営む町中華の長男として誕生し、離乳食でワンタンスープを与えられて育ったせいか。気づくと人生の半分以上、中華圏とズブズブの関係になっている。

香港返還の前夜、中国国営企業との合弁メーカーに、最初で唯一の日本人駐在員として派遣されて以来、深圳・蘇州・大連、それぞれ文化も価値観も気候も異なる3つの地域での生活を堪能した。転職して日本に帰国したり、メキシコに新工場を立ち上げに行ったりと、途中何度か中国との縁が薄まりそうになったものの、そのたびに「ああ、湖南料理の農家小炒肉が食べたい」「好きか嫌いかと問われれば、51:49で中国が好き」と再び「大地の子」に逆戻りしてきた。

そんな中国大陸を後にし、長年の夢であった台南での生活を始めて、ちょうど3ヶ月になる。社会人になって間もない頃、語学研修生として台北で過ごした経験もあったし、コロナ前までは毎年数回、台南・高雄には出張に来ていた。台湾語はさておき、中国語には大きな不安は無いし、まあなんとかなるだろう、という気持ちでやってきたものの、大陸とも日本とも異なる台南に改めて魅了される毎日である。

私にとって、大陸と台南の違いは何か。

バイクのヘルメットをシートの上に置きっぱなしにできる他者への信頼感。
飲食店に定休日があること。
現金至上主義で財布が手放せないこと(大陸では物乞いへの施しや、お寺のお賽銭までQRコードなので)。
などなど、挙げればきりがないが、最も大きな違いは「コミュニケーションの上手さ」だと思う。

台南の方々には、はっきりとした表情があり、会話がカラフルなのだ。
大陸では、朋友になる前後で人と人との関係性が激変する、極端なツンデレが多いと思う。よく知らない相手に喜怒哀楽の「喜」「楽」を表現するのが苦手なのかもしれない。それに比べて台南では、ちょっと買い物をしたり、飲食店で食事したり、あるいは、街で見知らぬ人と少しだけ触れ合う時でさえも、笑顔に包まれることが少なくない。日本のサービス業界で見られる「0円のスマイル」とも違う、自然に湧き出る人当たりの柔らかさや人懐っこさなのである。

会話の中に適度な「間」があることも感じる。あなたの話はしっかり聞いているよ、という安心感がある会話は心地よい。自己主張がぶつかり合い、相手の発言にかぶせるようにして話すことの多い国からやってきた私は、自分の会話の性急さや余裕の無さを痛感させられる。

日常生活や仕事の中で、仏頂面した者同士がコツンとぶつかって生じる、ささいなトラブルの種がしゅわしゅわと溶けていき、大陸や東京で感じてきたギスギス感が未然に緩和される。台南の方々の、このコミュニケーション能力の高さはどうだ!これが「台湾南部の人情味」なのかもしれない。そんなあたたかさに包まれながら、私は新しい環境に溶け込めてきていると感じて嬉しい。

そんな台南人も、ひとたびバイクに跨ると性格が変わるようだ。信号が青に変わる瞬間は、短距離走者が反応スピードを競うようだし、台南バイクデビュー後、既に何年寿命が縮まったか。しかし、最初は恐怖で肩に力が入り、追い越される一方だった自分が、気づけば追い越す方になって、熱帯の風を気持ちよく感じ始めている。ここでも私はまたひとつ「憧れの台南人」に近づいているのかもしれない。

文/横田武(よこた たけし)
京都大学法学部卒業。総合商社勤務時代に台湾師範大学にて1年間の中国語研修。中国高度成長の黎明期から日系製造型中小企業のプロ経営者としてのキャリアを積み、中国大陸各地での通算滞在歴は21年間。2021年春、念願であった台南での起業を実現。

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