【月一コラム みんなの台南生活】(26)麺をたずねて三千里

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【月一コラム みんなの台南生活】(26)麺をたずねて三千里
文/田平修

1.麺天国台湾、そして台南へ

 2016年2月、初めて台南を訪れた。前年9月に修士課程を修了し、翌年春の新卒入社まで自由な時間を過ごしていた私は、台湾一周中だった。古都・台南には、首都・台北とは違った、良い意味の田舎臭さを感じた。ゆったりとした時間が流れており、地元に帰ってきたような感覚を覚えた。台湾一周から日本に戻った私は、「台南が一番良かったかな~。擔仔麵っていうのがおいしかったよ!」と家族や友人に話したことを記憶している。 

 2024年2月、ちょうど8年ぶりに台湾に戻ってきた私は、ひょんなことから台南市民になっていた。この間、北欧スウェーデンとアメリカ北中西部に約5年間住んだ私にとって、一番堪えたのは気候の違いだ。2024年の春節は、季節外れの気温と湿度の高さで、熱中症になりかけた。一人暮らしのワンルームには、一般的にキッチンがついていない。毎日の外食は想像以上にしんどかった。色々な意味で日本に一番近い国、慣れるのも一番早い国と思っていた台湾は、そうでもなかった。これまで新しい環境にすぐに適応し、溶け込めていた私にとって、それは初めての試練だったかもしれない。

 それでも、生きていれば腹は減る。自称ヌードラー(Noodler:田平造語)の私にとって、台湾は麺天国であることを思い出した。少し心に余裕ができた私は、仕事帰り、Tシャツ短パンサンダルに着替え、台湾人気取りで近所の麺巡りを始めた。グルメな街として名高い台南には、ご当地麺料理がある。鱔魚意麵(田ウナギの揚げ麺焼きそば)と擔仔麵(肉そぼろ麺)はその代表格だ。ご当地麺以外にも、定番の牛肉麵、大腸麵線(もつ煮込み麺)、米粉(ビーフン)など、通りには麺料理を提供するお店が所狭しと軒を連ねている。 

2.腹を満たした台湾の麺たち

 ここでは、台湾生活半年の間に私のお腹を満たしてくれた、お気に入りの麺料理を紹介したい。

①大腸麵線
 台北・西門町の「阿宗麵線」が有名だが、台湾各地で味わうことができる。とろみのあるかつおだしのスープは、案外あっさりしていてサクッと食べられる。プリっとしたモツが、食感のアクセントになって飽きることはない。今回台南に来て、近所の夜市で初めて食べた大腸麵線は、パクチー抜きにした。それが、今ではパクチー抜きでは食べられない。辛味も、ニンニクも、パクチーも全て追加する。あっさりから、パンチの効いたがっつりに味変させてこそ、大腸麵線である。

②鱔魚意麵
 日本ではなじみのない鱔魚。田ウナギと訳されることが多いが、正直見た目は写真映えしない。しかし、台南の人気店「阿江炒鱔魚」で食べられる鱔魚意麵は、ブリっとした田ウナギの歯ごたえと、ニンニクとスパイスの効いた味付けで、食欲をそそる。「見た目はあれだけど、味はいいよ!」と断って、日本から訪ねて来てくれた友人を連れて行くのだが、みんな満足してくれる。

③牛肉拌麵
 スープのない、汁なし牛肉麵もお気に入りの一つ。台南のお隣・高雄にある人気店「港園牛肉麵館」で食べられる牛肉拌麵は、満足感のある一杯である。卓上にあるおろしニンニクをこれでもかとかけて食べるのが、台湾人の友人から聞いたおすすめだ。一杯がボリューミーなだけあって、たしかに味変してちょうどいいかもしれない。まだ試せていないスイカジュースもおすすめらしい。

 もちろん、他にもたくさんの麺料理を食べてきた。それから、台南には、日本と比較しても遜色のないラーメンを食べられるお店も数多い。私のおすすめは、裕農路にある「鯉作拉麵」。ぜひ台南在住日本人には、召し上がっていただきたい。

 昨年末まで住んでいたデトロイトから台南まで約12,000キロ。文字通り、麺をたずねて三千里。偶然の積み重ねで台湾、そして台南に来ることになったが、麺に導かれたのかもしれない。

文/田平修(たびら しゅう)
台南在住、麺好き宮崎人。高雄にある専科学校(日本の高専にあたる)教員として、日本語教育と国際交流に携わる。スウェーデン、イギリス、アメリカに続いて、台湾は海外生活4か国目。一番好きな台湾メシは、大腸麵線。

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