台南パイナップルケーキクエスト(パイクエ)第三弾は、「Ⅲ」と「川」にちなみ、中西区の民権路と青年路の交差点に位置する「萬川號」をご紹介します。
創業はなんと1871年! 今年でちょうど150周年ですね。ちなみに今台湾中で話題になっているテレビドラマ「斯卡羅(スカロ)」は1867年の話で、府城(台南)の場面も出てきました。日本では明治維新の時代。その頃から今まで続いているのだと思うと胸が熱くなります。
このお店の看板商品は肉包(肉まん)で、ふっくらとした生地にぷりぷりの豚肉、大ぶりのシイタケや卵の黄身がぎゅっと詰まっています。他に温かいものには菜包(タケノコまん)と、もちもちした半透明の生地が特徴の水晶餃があり、広々とした店内の商品棚には昔ながらの台湾のお菓子がずらりと並んでいます。
パイナップルケーキは二種類。形も餡も昔ながらのものと、台湾の島の形をした土鳳梨酥と。後者は上等な紙で包装されていて、お土産にもよさそうです。ここは前回取り上げた「新裕軒餅舖」の老主人が、若い頃に徒弟として働いていたというお店で、そのためか昔ながらのパイナップルケーキの歯応えや、餡の味わいは似通ったものがあります。ただ新裕軒のほうは一回り大きくて一個40元、こちらは一口サイズで30元となっています。
筆者がここに来ると必ず買うのは、肉まんと黑糖糕(黒糖蒸しパン)。黑糖糕は澎湖諸島の名物とされていますが、台南にもいくつか美味しい黑糖糕のお店があります。昔から澎湖と台南の間には人の往来が盛んにあり、それに伴って食文化も伝わってきたのかもしれません。
(だいどうあつし) 作家、翻訳家、三線弾き。1984年東京生まれ。「人がより自然に、シンプルに、活き活きと暮らせる町」を求めて、2012年より台南在住。日本蕎麦屋「洞蕎麥」を5年間経営後、翻訳事務所「鶴恩翻譯社」を運営。日本語著書『台湾環島 南風のスケッチ』、中国語著書『遊步台南』、共著『旅する台湾 屏東』、翻訳小説『フォルモサに吹く風』『君の心に刻んだ名前』『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』。
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