台湾飲食業界で成功するためには〜なぜ日系拉麺店の撤退が相次ぐのか(下) 経営戦略編

nippon.comより転載。中国語版

目次

台湾での第三次ラーメンブーム

歴史的にみて、台湾では過去に何回かの日本食ブームが起きている。日本の飲食業が本格的に台湾に進出し始めたきっかけとなったのは2012年に始まった「第三次ラーメンブーム」だった。この年にオープンした一風堂や山頭火といった有名ラーメン店は驚くほどの人気となり、2時間、3時間待ちの行列は当たり前の異常な状況が数カ月も続いた。

そんな台湾のラーメン人気を目のあたりにした日本の有名ラーメン店が、台湾を比較的参入がしやすい海外市場と認識したこともあり、その後、短期間で続々と台湾進出を果たした。そして現在、首都台北では有名ラーメンチェーン店以外にも小規模チェーン、個人店、現地ブランドの店舗などが氾濫して競争はさらに激化している。

このような流れの中で、最近相次いだ有名店の台湾撤退という事態は、ブームやブランドだけでは台湾の飲食業界で生き残ることが難しい現実を浮き彫りにした。ラーメン店は全体的に数が多いため、台湾撤退がインパクトのあるニュースになるが、ここ数年日本から進出した飲食店自体の撤退も増えているように思う。一方で、新たに台湾進出をする飲食業も数こそ以前に比べ減少している印象はあるが、日本食に対する人気が高い台湾では、依然として旺盛な出店需要があるようにも感じられる。

デリバリーサービスの高手数料

今年に入り日系飲食業の撤退が目立っているのは、新時代のサービスの誕生とも関係していると私は考えている。それは、日本でもおなじみのデリバリーサービスUber Eatsとドイツ発祥のFoodpandaだ。台湾の日中は非常に暑く、また首都台北は雨も多い気候であることから、消費者が自宅や職場から出ることなく、29~30元(日本円100円=30元)という安い手数料で多種多様な飲食をテイクアウトできるサービスが支持を集めるのは必然だ。

これは時代の変化であり消費者から高いニーズがあるデリバリーサービスに対し、飲食事業者が無関心でいることは難しいだろう。実際に台北の繁華街や大学付近の昼食時間には多くのデリバリーが激しく出入りしている。一方でこれまでにぎわっていた路面店の飲食店への人出は目に見えて減っており、経営に大きな打撃を与えている。

一番大きな負担となっているのは飲食事業者がデリバリーサービス会社に支払わなければならない手数料だ。その手数料は飲食事業者の規模等により若干の違いはあるようだがおおむね28~35%だと思われる。わかりやすく言うと200元の商品を140元で消費者に売っているのと同じこととなる。一般的に飲食店の利益率は総じて低く、ここで売り上げの約30%もの手数料をデリバリー業者に支払うとなると飲食店が利益を出すのは非常に難しいことになる。ならば値上げして消費者に手数料を負担してもらえばいいかというと、価格に敏感な台湾人消費者に納得してもらうことも簡単ではない。消費者にとっては飲食店の利益があるかないかなど関係ないことだからだ。

しかし、デリバリーサービスを利用する消費者は確実に増えていくため飲食事業者は難しい局面に立たされている。利益を考えず注文を得るためデリバリーサービスに参加する飲食事業者もあるだろう。大手飲食会社ならば資金力でそのコストをカバーし、勢力を拡大することもありえる。デリバリーの流行はいずれにしろこれは時代のニーズであり、抗えない変化だ。こうした時代の速い変化に対応しながらそれでも利益を出せる営業スタイルを確立できなければ淘汰(とうた)されていくのは時間の問題である。

外国企業である日本の飲食事業者がこうした現地マーケットの変化に機敏に対応していくのは容易ではない。生き残るためには優秀な現地スタッフまたは現地に深く精通したスタッフが必要であると同時に、日本企業が苦手といわれるスピード感のある決定力が不可欠になる。

難しい中南部への店舗展開

台湾進出ではまず台北に出店し、その後中南部に店舗を広げていくという戦略を取る事業者が多い。しかし台湾の飲食事業者でも北部から南部と全国展開している業者は少ない。分かりやすい事例では、台北から台中は東京駅から静岡駅、台北から高雄は東京駅から名古屋駅ほどの距離がある。日本でも東京の業者が名古屋に進出するのは簡単ではなく、それが外国であればなおさら難しいのは言うまでもない。

台湾の北部と南部は気候も違い、食習慣や味付けもだいぶ違う。台湾南部の味付けは北部に比べ甘目であり、しょっぱいものへの抵抗感が強い。一つ例を挙げれば、北部と南部のチマキは別の食べ物といっていいほど違う。チェーン店だからといっても、ローカライズやローカル戦略なしに進出しても、うまくいくわけがないのである。

台湾人スタッフは、地元から離れた場所への転勤を望まないという問題がある。台北で育てた人材を会社命令として強引に中南部に異動させれば、台湾人スタッフは迷いなく辞めるだろう。そのため、現地で中心となるスタッフを育てなければならない。つまり中南部への進出は、ゼロからのスタートとあまり変わらないのである。

その難しさは実際に超有名ブランドといえるミシュラン一つ星のJapanese Soba Noodles蔦、北海道の海老ラーメンで有名な一幻拉麺や山頭火、名代富士そばなどの有名ブランド店が中南部に進出し、いずれも2年ほどで撤退しているのを見ても明らかである。超有名ブランドであっても中南部進出は容易ではないのである。順調に中南部進出をしているブランドとしては花月嵐や屯京拉麺、他業種でいえば丸亀製麺、スシローがあげられる。これらのブランドは中南部進出のために人材をしっかり育て、立地をよく吟味し慎重に進出準備をしていた形跡がうかがえる。なお2年弱で閉店が多いのは、台湾のデパート等商業施設の場合、入居する店舗は2年契約が多く、売上が上がらなければ継続を望んでも退店を迫られることもあるからである。

台湾はやはり有望なマーケット

少子高齢化による日本マーケットの縮小、競争激化等の対策として海外進出を模索している日本企業は多いかもしれない。しかし、しっかりとしたマーケットへの理解や調査分析がなく海外へ進出するのは非常に高いリスクがある。

台湾の少子高齢化はすでに始まっており、内政部によると2020年には人口減少に転化する。高齢化のスピードも日本より急速に進む。65歳以上の人口は2025年に20%、2040年に30%に達すると予測されている。日本は高齢化社会から超高齢化社会になるまで11年かかったが、台湾は8年で超高齢化社会に到達するとも言われている。

一方で、台湾は少子化も非常に厳しい状況だ。昨年の出生率は過去2番目に低い1.06だった。これは日本よりはるかに低い数字で、今後大きく反転する可能性もないため、台湾のマーケットが拡大する状況にはないといえる。

かといって台湾進出の意味がないわけではない。海外という異文化の中で得た知識経験は日本国内でのインバウンド対策に大いに役に立つだろうし、宣伝にもなる。海外進出は国内従業員のモチベーションの向上につながる可能性もある。

日本飲食店の撤退が相次いではいるが、スシローのような回転すしチェーンやすき家のような低価格の牛丼チェーン、丸亀製麺のようなうどんチェーンなどは勢力を拡大する兆しを見せている。これらのチェーン店は出店を急がず、1号店で時間をかけしっかりと力を蓄えた後に、2号店、3号店と展開しているようである。

そう考えれば、台湾マーケットは攻略が難しくて魅力のないマーケットということでは決してなく、他の国に比べて、国民感情も親日的で、日本からの距離も近いという利点もあり、きちんとした準備、戦略をすれば、有望なマーケットであるのは間違いない。

バナー写真=台湾のショッピングモール内のフードコートに展開している日本の飲食店(筆者撮影)

 

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