IPOブーム再び?上場が相次ぐ台湾飲食業界

5月に感染が急拡大し警戒レベル第3級のセミロックダウンとなっている台湾だが、昨年から今年4月まで大手飲食企業の中では最高益を出しているところも少なくなかった。コロナ後の飲食業の行方は不透明だが、昨年から今年頭にかけて台湾飲食業界ではIPOブームが起きていた。I

昨年台湾飲食業界では大きな動きが起きていた。飲食業のIPOが活発化したのである。過去台湾では2012年に飲食業のIPOが大ブームとなり、株価はさながら飲食業バブルといえるほどの盛り上がりを見せ、王品集団をはじめ大手飲食会社が積極的に上場に動いた。だがブームが去り飲食業の株価は低迷、その後飲食業のIPOが大きな話題となることはなかったが昨年九月に日本のくら寿司(亜州蔵寿司2754-TW)の上場を皮切りに、餃子王と呼ばれる低価格餃子チェーン店を運営する八方雲集集団(2753-TE)、朝ごはんチェーン大手麥味登を運営する揚泰国際(2755-TE)が相次いで上場した。さらに今後も台湾最大のコーヒーチェーン店ルイーザカフェやCamacafe、台湾フライドチキンチェーン繼光香香鶏や日本の天丼チェーン金子半之助を運営する香繼光集団等多くの飲食業がIPOの準備を行っている。

今回のIPOブームが2012年のブームと違うのは前回のブームでは王品集団など大型で主に直営でレストランを運営する企業の上場が多かったが、今回のIPOブームでは店舗数の多い低価格チェーン店で主にフランチャイズを展開している企業が目立つ。例えば八方雲集集団は餃子店だけで990店、運営するその他のブランドを含めると総店舗数は約1200店にもなる。朝ごはんチェーン店麥味登も約820店を展開し卓靖倫総経理は上場前の雑誌インタビューで3年以内に倍増の1600店舗を目指すと話している。今後上場を目指しているルイーザカフェも500店を超え、台湾フライドチキンの繼光香香鶏は台湾国内では47店と小規模だが、海外店舗を含めると350店を運営している。参考に日本国内の低価格帯有名チェーン店の日本国内店舗数を見ると2021年1月現在で吉野家が1191店、丸亀製麺が861店、ドトールコーヒーが1085店となっている。なお日本最大の店舗数を誇るマクドナルドは2923店である。台湾の国土面積は九州の0.8倍、人口は日本の五分の一弱であり、台湾企業の店舗数がいかに多いのかがよくわかるだろう。

なぜ今IPOなのか

今なぜ台湾でフランチャイズ飲食企業のIPOが盛り上がっているのか。人口2300万人と決して大きなマーケットとは言えない台湾だが、中でも飲食業は約14万件の飲食店が激烈な競争繰り広げているレッドマーケットである。さらに急激な少子高齢化が進展しており2018年に高齢社会に入ったばかりだが高齢化のスピードは凄まじく9年後の2026年には超高齢社会に突入するという統計がでている。一方、2020年の出生率は1.05人と改善の兆しはなく、人口はマイナス成長へ入いるなど飲食業を取り巻く環境は年々厳しさを増している。特に少子化の影響は人手不足という形でもはっきりと表れている。今年に入り複数の大手飲食企業がアルバイトの時給大幅アップを発表するなど人材獲得のための賃金上昇も起き始めている。他にも排煙や排水などへの環境規制強化に対応するための設備投資負担や消費者の嗜好の変化に合わせた店舗デザインや設備の近代化への費用など飲食業の運営コストは右肩上がりで上昇し続けている。企業が競争を勝ち抜き成長を続けるためにはこれまでに比べ大きな資本が必要とされる時代に突入しているのである。また一方で新たなマーケットを求め海外進出にも積極的に動いてもいる。飲食業界でIPOが増加しているのはそれらの問題に対応していくための資本戦略でもあるのだろう。

台湾飲食業の未来

台湾の飲食マーケットの厳しさはすでに見てきたとおりだが、最後に今後どのような変化を見せていくのかを考えてみたい。

フランチャイズ企業は店舗拡大により利益を上げていくシステムであることからIPOを行った企業は積極的に店舗数を増やしていくだろう。そして今回ブームとなっているのは低価格帯飲食業によるIPOである。このマーケットには個人零細企業や家族経営店が多く、新たな設備投資や人件費の上昇に耐えられない店が多い。特に極度の人手不足のなかで人材の獲得競争になれば営業を続けていくことすら困難になるだろう。実際にこのような問題はすでに発生している。昨年12月に台南名物ミルクフィッシュ料理の名店である永記虱目魚が突然閉店した、理由は人手不足であるとともに後継ぎがいないことと言われている。同店はその後今年2月に同じく台南の老舗海老巻チェーン店の周氏蝦捲に事業譲渡を行い営業を再開している。今後個人店が単独で生き残っていくのはますます厳しくなっていくだろう。

さらにこれからはフードテックへの対応などもしなければならない時代となっていくのは避けられない。テクノロジーへの対応には少なくない資本が必要となることから個人零細企業での設備投資はますます難しくなり、設備環境面でも大手チェーン企業との差はさらに広がっていくのは間違いないだろう。起業精神旺盛で魅力的な個人店や小規模店が多い台湾飲食業界だが、今後は日本のように資本力のあるチェーン店に集約され、個人店や小規模店の数は減少していくのは避けられないかもしれない。すでにその兆しは見え始めている。

 

 

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