皆様こんにちは、会員の大洞敦史です。これから「台南パイナップルケーキクエスト」(略してパイクエ)と題しまして、台南のパイナップルケーキ(鳳梨酥 フォンリースー)を、有名無名とりまぜ不定期に紹介してまいります。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
初めに取り上げるのは細い路地の一角、小媽祖廟の向かいに、静かにしかし存在感を湛えてたたずむ「舊來發餅舖」。なんと150年近く前、1875年創業というお菓子の老舗です。看板は代々受け継がれ、現在は五代目の若き職人、何昱翰氏(写真左)が守っていらっしゃいます。
パイナップルケーキと聞くと、ほとんどの日本人は四角い形を思い浮かべられると思いますが、ここのそれは円柱形。ここに限らず台南の歴史ある菓子店で売られているものは、ほとんどがそうなっています。
お店の方はとても親切で、質問すると何でも答えてくれます。お話によると、ここでパイナップルケーキを売り始めたのは、実に60年以上も前のこと。パイナップルケーキは昔、台北の郭元益という職人が売り始めてから有名になり(元祖については諸説あるのでここでは触れません)、その後台南の職人もアレンジを加えて売り出しました。
手に持つと、ずしりとした重みを感じます。ビニールの包装越しにもパイナップルの心地よい香りが漂ってきます。生地はホロホロ、サクサクとした食感で、ぎっしり詰まった餡はしっとり、もちもちとして柔らかく、甘さ控えめの優しい味わい。
パイナップルケーキは餡に冬瓜を入れるものと入れないものがあり、中には冬瓜ばかりでパイナップル不使用のものさえあったりしますが、ここのはパイナップル主体で少しだけ冬瓜を入れているとのこと。パイナップルも、近年流行の土鳳梨という繊維質の多いものではなく、昔ながらのものを使っているそうです。
更に舊來發には、まさに「ケーキ」という名にふさわしいジャンボサイズがあります! 一斤(約600g)もあり、主に「喜餅」という、結婚式に際し新婦側が配るお菓子として昔から愛されてきたそうです。常温で二週間ほど保つそうですので、日本へのお土産にもぴったりですね。
舊來發餅舖
住所:台南市北區自強街15號
営業時間:9:30~20:30(不定休)
電話:06-225-8663
価格:小35元/大240元
公式サイト:http://www.twglf.com/

(だいどうあつし) 作家、翻訳家、三線弾き。1984年東京生まれ。「人がより自然に、シンプルに、活き活きと暮らせる町」を求めて、2012年より台南在住。日本蕎麦屋「洞蕎麥」を5年間経営後、翻訳事務所「鶴恩翻譯社」を運営。日本語著書『台湾環島 南風のスケッチ』、中国語著書『遊步台南』、共著『旅する台湾 屏東』、翻訳小説『フォルモサに吹く風』『君の心に刻んだ名前』『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』。
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